SEARCH
検索詳細
白鳥 義彦大学院人文学研究科 社会動態専攻教授
研究活動情報
■ 論文- 2022年11月, 社会学雑誌, 39, 133 - 140, 日本語エミール・ブトミーとシアンス・ポー[招待有り]
- 2010年09月, 『大学の設置形態に関する調査研究―国立大学財務・経営センター研究報告第13号』, 91-110頁, 日本語フランスの高等教育制度と大学の設置形態研究論文(学術雑誌)
- 2006年03月, 日仏教育学会年報, 第12号, 日本語2005年度研究大会シンポジウム『フランスにおける大学評価と契約政策』司会者報告研究論文(国際会議プロシーディングス)
- 2005年11月, アジア遊学, 81号、162-179頁, 日本語フランスにおける中国系移民研究論文(学術雑誌)
- 2004年03月, 『日仏教育学会年報』, 第10号(通巻番号No.32)、111-121頁, 日本語エスピナスの教育論―デュルケーム教育論との関係を中心として―[査読有り]研究論文(学術雑誌)
- デュルケームの生きた第三共和政期のフランスは, 「非宗教的・無償・義務的」という原則に支えられた初等教育制度が確立されたことに端的に見られるように, 近代的な国民国家を目指した歩を進めようとしていた.同時に, 普仏戦争の敗北から出発した第三共和政には国家の再建ということが課せられており, その一環として, 初等・中等教育と並んで高等教育の改革もまた議論された。日本社会学会, 1995年06月, 社会学評論, 46(1) (1), 46 - 61, 日本語
このような背景を踏まえ, 本論文では, デュルケームの教育論のなかでも初・中等教育の問題の陰にかくれ, これまで検討されることの少なかったかれの大学論に注目した. かれは, 高等教育の問題についてもまた深い論述を行っている.実際デュルケームは, 1900年前後の「新しいソルボンヌ」を代表する人物の一人でもあった。
デュルケームの論述の検討を通じて, 改革に至る当時の大学の諸問題や, 改革の理念における大学像が明らかにされる.大学は, 職業的な専門教育をおこなうグラン・ゼコールとは区別され, 社会的紐帯を高める役割を期待された「科学」の場として把握されている. またデュルケールの社会学は, そのような科学観を背景に大学内に制度化されたのであり, 高等教育改革の議論と関連づけることにより, かれの社会学の性格も浮き彫りにされるのである。 - デュルケームの生きた第三共和政下のフランス社会は、「国民教育」が確立される教育改革に見られるように実質的な国民国家形成期にあたる。そのなかでかれは自己の国家論を論じていた。一方デュルケームは、晩年に第一次世界大戦に直面するが、それはかれの一貫したテーマであった安定したフランス社会の確立にとって大いなる危機であった。日本社会学会, 1993年03月, 社会学評論, 43(4) (4), 436 - 450,497, 日本語
本論文では、デュルケームが一九一五年に発表したパンフレット『世界に冠たるドイツL'Allemagne au = dessus de tout』を取り上げて主題とした。このパンフレットは、デュルケームの理論的関心と実践的関心をつなぐテクストでありながら、これまでほとんど論究されていない。本論文では、このパンフレットの内容を明らかにした後、それをデュルケーム国家論の展開過程のなかに位置づけた。デュルケーム自身の国家論を踏まえて、「異常形態」としてのトライチュケ国家論が批判されている。またデュルケーム国家論の展開過程では、ドレフユス事件が重要な意味を有していることも示した。このテクストの重要性は、 (1) それがかれの国家論の本質を明らかにするものである点、 (2) 当時、国家の問題が重要であった点、 (3) フランスにとって、また書評論文数にも示されているようにデュルケーム自身にとっても、ドイツの存在が重要であった点、 (4) このテクストが第一次世界大戦という時代状況に即したものである点、に求められよう。
デュルケームは実践的な関心をもとに理論的な考察を行ったが、かれは結局現実の国家を越える社会的枠組は構想し難かった。それがいかに構想されうるかは、まさに今日的な課題でもある。
- 2023年12月, 社会学雑誌, (40), 172 - 182, 日本語【翻訳】イギリス植民地帝国における社会科学の誕生
- 2023年12月, 社会学雑誌, (40), 149 - 171, 日本語【翻訳】神話の構造分析の誕生:デュルケーム、グラネ、レヴィ=ストロース
- 2023年11月, 日仏社会学会年報, (34), 177 - 202, 日本語【翻訳】近代人および非近代人における機械的連帯と有機的連帯ーブルデューと進化主義の危機ー
- 2022年11月, 科研費基盤研究B(22H00904)2022年度~2025年度「『集合意識』から『情動の社会学」』へ―デュルケーム社会学の現代的展開―」ホームページ、https://avecdurkheim.com/reading.html, 日本語社会を成り立たせるもの
- 2022年11月, 社会学雑誌, (39) (39), 3 - 5, 日本語特集紹介 福祉国家・教育・統治―一九世紀フランス社会研究―[招待有り]
- 2022年07月09日, 図書新聞, (3550) (3550), 5 - 5, 日本語【書評】平田文子著『デュルケーム世俗道徳論の中のユダヤ教―ユダヤの 伝統とライシテの狭間で』[招待有り]
- 2022年06月, 社会学評論, 73(1) (1), 74 - 75, 日本語【書評】流王貴義著『デュルケムの近代社会構想―有機的連帯から職能団体へ』[招待有り]
- 2006年11月, アレゼール日本ニューズレター, 第6号、3-6頁, 日本語フランスにおける大学評価の特徴―CNEを中心として速報,短報,研究ノート等(学術雑誌)
- 2006年03月, 日仏教育学会年報, 第12号, 日本語フランス大学学院Institut universitaire de Franceについて記事・総説・解説・論説等(学術雑誌)
- その他, 神戸大学, 2008年03月, 日本語, 共生倫理研究会編集。総頁数262頁。第6章「『国民的共生』と天皇制―美濃部憲法学における絶対君主と立憲君主の『和解』―」(107-125頁)を執筆。美濃部達吉の憲法学説がなぜ大日本帝国憲法の正統な解釈として承認されるに至ったか、その論理を考察した。共生の人文学―グローバル時代と多様な文化―学術書
- 単訳, 藤原書店, 2006年06月, 日本語「知識人」の誕生 1880-1900学術書
- 単著, 関西学院大学出版会, 2004年10月, 日本語はじめて学ぶフランス 第2章 フランスの教育学術書
- 共訳, 藤原書店, 2004年04月, 日本語『社会学の新生』第三部学術書
- The Seventh Global Creative Industries Conference, 2023年11月感情は文化か?口頭発表(一般)
- 第95回日本社会学会, 2022年11月19世紀フランスにおける社会主義と社会学-19世紀のフランス社会と社会学-
- 2006年度日仏教育学会, 2006年10月, 日本語, 日仏教育学会, 神戸大学, 国内会議フランスにおける高等教育と研究の制度的動向口頭発表(一般)
- 第58回 日本教育社会学会, 2006年09月, 日本語, 日本教育社会学会, 大阪教育大学, 国内会議フランス高等教育の評価制度口頭発表(一般)
- First Gathering of the « MANGA NETWORK », 2006年05月, 英語, Center for international study and research(CERI), Sciences Po, Paris, Center for international study and research(CERI), Sciences Po, Paris, 国際会議Manga : A media of sub-culture or counter-culture ?口頭発表(一般)
- ARESER日本第3回シンポジウム, 2006年03月, 日本語, ARESER Japan, 日仏会館, 国内会議フランスにおける大学評価口頭発表(招待・特別)
- 第78回 日本社会学会, 2005年10月, 日本語, The Japan Sociological Society, 法政大学, 国内会議『社会学的方法の規準』における認識的社会観口頭発表(一般)
- 第57回 日本教育社会学会, 2005年09月, 日本語, The Japan Society of Educational Sociology, 放送大学, 国内会議現代フランス高等教育の諸相口頭発表(一般)
- 37th World Congress, International Institute of Sociology, 2005年07月, 英語, International Institute of Sociology/The Swedish Collegium for Advanced Study in the Social Sciences, Stockholm, Sweden, 国際会議Some Perspectives for Research on Immigration口頭発表(一般)
- 第77回 日本社会学会, 2004年11月, 日本語, 日本社会学会, 熊本大学, 国内会議社会学と地理学口頭発表(一般)
- 第56回 日本教育社会学会, 2004年09月, 日本語, 日本教育社会学会, 東北大学, 国内会議フランス高等教育の改革動向口頭発表(一般)
- 36th World Congress, International Institute of Sociology, 2004年07月, 日本語, International Institute of Sociology, Institute of Sociology, Chinese Academy of Social Sciences, Beijing, China, 国際会議The Multiformity of Identity: Cases of the Chinese in France口頭発表(一般)
- COE国際会議「比較規範生成論の可能性」, 2004年07月, 英語, 「市場化社会の法動態学」研究センター, 神戸大学, 国際会議Ethnicity and Identity: From a Research on the Chinese in France口頭発表(一般)
■ 共同研究・競争的資金等の研究課題
- 日本学術振興会, 科学研究費助成事業 基盤研究(B), 基盤研究(B), 奈良女子大学, 2022年04月 - 2026年03月「集合意識」から「情動の社会学」へ-デュルケーム社会学の現代的展開
- 日本学術振興会, 科学研究費助成事業 基盤研究(B), 基盤研究(B), 上越教育大学, 2022年04月 - 2025年03月大学と都市の相互浸透性に関する日仏比較関係史研究
- 日本学術振興会, 科学研究費助成事業 基盤研究(C), 基盤研究(C), 大阪府立大学, 2020年04月 - 2023年03月福祉国家以前と以後の政治テクノロジー:仏19世紀以降の刑罰・公教育・社会的保護本科研共同研究の二年目にあたる本年度は、一年目の基礎研究を受けて、つごう7回の研究会を開催し、各研究分担者による担当部分についての研究の深化、その報告が行われた。新型肺炎の流行により、研究会としては共同研究者以外にも範囲を広げつつも、やむを得ず、遠隔のみでの開催となった。 ただし個別研究の進展はそれぞれに順調に進み、研究成果の中間報告として、共同で成果報告を行うこととし、年度の半ばからは、それぞれの研究の報告会を行うこととなった。 中村はCh. Dupin によるいわゆる職人層への社会教育としての科学/工学教育の実践を、また白鳥はCNAM, Science-Poなど、いわゆるGrands ecoles についての報告を行った。また本年より研究協力者として定藤博子(阪南大学)、渡邊拓也(大谷大学)の参加を得て、それぞれ前者によりポーランド労働移民についての、後者にはダルマーニュを中心に人格概念の形成について報告を行った。さらに北垣はFustel de Coulange を取り上げ19世紀の家族概念について、前川は前年度に引き続きFoucault を中心に刑事政策について理論的検討を行った。以上の成果の一部は、神戸大学社会学研究会『社会学雑誌』no. 39(印刷中)で公表される予定である。 共同研究全体としては、19世紀における社会概念の多様性により注目が向けられ、いわゆる非国家的側面、すなわち人格、家族(家)、そして宗教の果たした役割に関心が集まり、これらは引き続き次年度の課題となるった。
- 日本学術振興会, 科学研究費助成事業 基盤研究(C), 基盤研究(C), 神戸大学, 2019年04月 - 2023年03月, 研究代表者高等教育改革と人文学-日仏比較研究ー本年度も、本科研費の研究課題として設定している、2010年代後半以降の今日における日本とフランスの高等教育改革それ自体についての研究という第一の水準(具体的な論点として、①「大衆化」と「卓越化」との二律背反への対処、②大学と教養教育/職業教育、③高大接続の新たな展開、④「大学界」という視点、⑤全般的背景としての高等教育改革の歴史的展開過程、を設定している)、日仏両国における高等教育改革の、人文学に対する影響についての比較考察という第二の水準、さらに、より抽象的なレベルで「モデルの伝播」という概念を両国の高等教育改革から引き出し、人文学研究への普遍的な応用を考えるという第三の水準について、着実に研究を進めていった。またそれらを、具体的な形での研究成果として、論文、学会発表等という形で積極的に公表することができた。とりわけ日仏教育学会2021年度研究大会では本科研メンバーが中心となってシンポジウムを企画し、報告者、指定討論者となるとともに、フランスからの研究者のオンラインでの参加を実現した。またこれまでに引き続いて、「人文学」のあり方そのものを考察の対象とするという本科研費研究の基本的な問題関心に沿いながら、科学史や社会学や歴史学をはじめとする諸学問そのものについてや、社会における学問の位置等についての論究も、複数公刊することができた。さらに、書評、新刊紹介や古典再訪といった形で、研究状況のレビューも複数公刊している。
- 日本学術振興会, 科学研究費助成事業 基盤研究(B), 基盤研究(B), 神戸大学, 2017年04月 - 2020年03月従来、別々の枠組みで議論されてきた近世と近代の家族人口論を融合し、新たな家族変動論を見いだすことが本研究の課題であった。明治維新に先駆けて19世紀中葉から出生率の上昇や人口増加が、とりわけ東北地方で顕著だったこと、この人口学的状況により近代に先駆けて「家」を形成できる家族が増え「家」が一般化したこと、近代以降は希求した「家」の実現性が高まるなか死亡率や離婚率が低下し「家」成員の固定化が進んだこと、それにより近代の「家」は人生に安定をもたらす以上の不自由で、個人を縛る存在へ変貌したこと、このような長期的変化に対するひとつの見通しをえた。競争的資金
- 日本学術振興会, 科学研究費助成事業 基盤研究(B), 基盤研究(B), 奈良女子大学, 2015年04月 - 2019年03月社会学のディシプリン再生はいかにして可能か――デュルケーム社会学を事例として現代の社会学はディシプリンの固有性が揺らぎ、発信力や教育力の低下、学徒減少などの危機に直面している。この危機に取り組むには、社会学の構築過程と展開を解明する「自己反省の社会学」を深化させなければならない。そこで本研究は、ディシプリンの確立を成し遂げたデュルケーム社会学を事例として、①起源の解明、②継承・批判の研究、③受容状況の国際比較研究、④社会学教育法の研究と実践という4側面の研究を進め、論文25本、学会発表16本、単著3冊の成果を上げるとともに、国際シンポジウムの開催やニュースレターの発刊をした。成果はデュルケーム命題集(2019年度刊行予定)や論集(全25章脱稿済)として結実しつつある。
- 日本学術振興会, 科学研究費助成事業 基盤研究(C), 基盤研究(C), 神戸大学, 2014年04月 - 2017年03月, 研究代表者研究課題として設定した、①「大衆化」と「卓越化」との二律背反の相克、②高等教育の「自由化」政策と大学のガバナンス、③大学評価の諸相、④教養教育とキャリア教育、⑤それらの全般的背景としての高等教育改革の歴史的展開過程、という5つのテーマを軸に、日仏両国の比較研究を進めた。とりわけ、中央集権的とされる日仏両国での高等教育のあり方の共通点と相違点や、19世紀末、第二次世界大戦後、1960年代末、そして中心的課題である現代といった、大学界が大きな変化を見た時期における、日本およびフランスの高等教育改革のあり方の共通点と相違点等に、研究成果を得ることができた。競争的資金
- 日本学術振興会, 科学研究費助成事業 基盤研究(B), 基盤研究(B), 神戸大学, 2013年04月 - 2017年03月日本、韓国、台湾の地方社会で「南北型」の国際結婚に関する問紙調査や聞き取り調査を行い、「再生産領域」の変容、日韓台間の共通性や多様性、中国人妻と東南アジア出身妻の差異が明らかになった。 また国際結婚妻の出身地である中国東北部、フィリピン、タイの地方社会でその親や近親者に聞き取り調査等を行い、地方社会ごとの国際結婚の個性的な展開、出身家族と女性の関係の絆の強さ、そして東南アジア女性が出身地域社会に及ぼす影響の重要さが明らかになった。さらに、タイなどでは女性の結婚移住先の中心は東アジアを大きく越えて展開しているので、東アジアの「北」と「南」は、国際結婚により単純な形で結合しているのではない。競争的資金
- 日本学術振興会, 科学研究費助成事業 基盤研究(A), 基盤研究(A), 2012年10月 - 2016年03月大学が自立した学術経営体として環境変化に迅速かつ柔軟に変化に対応するためには、大学のガバナンスとマネジメントの改革が喫緊の課題となっている。本研究は、マネジメントの側面に注目し、国際比較を行い、主として学術面のマネジメントに従事する「学術管理職」と財務や総務といった間接部門のマネジメントに従事する「経営管理職」の相互作用の分析を行った。その結果、 日本の大学に比して、海外大学では二つの経営層の一層の職位分化と専門職化が進行していること。にもかかわらず、二つの経営層が機能し、影響力を及ぼしているドメインには共通性が見られること。しかし、職能形成には大きな相違が見られることが明らかになった。競争的資金
- 日本学術振興会, 科学研究費助成事業 基盤研究(C), 基盤研究(C), 日本女子大学, 2011年 - 2013年「能力」の制度としての試験に関する比較社会学的考察本研究の目的は、試験を「能力」の制度ととらえ、その観点のもとで、特に80年代以降生じてきた新しい「能力」の制度の社会学的意味について、イギリス、フランス、タイ、日本の四つの地域の日刊全国紙と関連重要人物へのインタヴューにもとづきつつ、歴史をふまえ社会文化的ネットワーク分析を用いた「分厚い比較」の方法により明らかにしようとするものである。結論としては、こうした新しい「能力」諸概念は、「試験」と相対的に離れたところに位置し、「教育」という文化項目および「政府」「学校」というアクター項目を通して「試験」と結びついているのが特徴であることが明らかとなった。
- 日本学術振興会, 科学研究費助成事業 基盤研究(C), 基盤研究(C), 神戸大学, 2011年 - 2013年, 研究代表者研究課題として設定した、①「大衆化」と「卓越化」との二律背反の相克、②高等教育の「自由化」政策の影響、③リベラル・アーツと教養教育、という3つのテーマを軸に日仏両国の比較研究を進めた。日本およびフランスのいずれの国においても、さまざまな「改革」の動きの一方で、ともすれば見過ごされているようにも見受けられるのは、「改革」を通じてどのような高等教育を目指すのか、あるいはまた、その新たな高等教育を通じてどのような社会を目指すのか、といった本質的、理念的な問いである。研究代表者および研究分担者は、こうした根本的な問いを共有しながら、それぞれの具体的な研究テーマに取り組んで研究を進めた。競争的資金
- 日本学術振興会, 科学研究費助成事業 基盤研究(A), 基盤研究(A), 神戸大学, 2007年 - 2010年本研究は、東アジアの地方社会を「地方的世界」という観点から、地方社会の形成の論理、現代的な変化の特質、そして今後の発展の可能性や課題を明らかにした。東アジアの地方社会では村落と都市(町)は対立しているのではなく、歴史的文化的伝統の上に成り立つ両者の有機的な関係が形成されてきた。そして、それに立脚して「地方的世界」が存在してきた。したがって村落はもとより、地方都市(町)、そして両者の関係の繁栄や再生こそ、地方社会、延いては東アジア自身の豊かな発展に不可欠であることを明らかにした。競争的資金
- 日本学術振興会, 科学研究費助成事業 基盤研究(B), 基盤研究(B), 神戸大学, 2007年 - 2010年, 研究代表者本研究では、社会学、文学、歴史学といった人文学の学際的な共通基盤の上に、「結社」という研究視点を共有して、フランス、イギリス、インド、アメリカ、日本等を主たるフィールドとして研究を行った。また「結社」の概念を幅広く捉えながら研究を遂行することにより、「結社」の多様性と、社会における人間の活動を考察する際の「結社」という枠組みの有効性を把握することができた。歴史的な展開のコンテクストを踏まえつつ、地域的な比較の観点にも着目しながら、社会における「結社」の意義を明らかにした。競争的資金
- 日本学術振興会, 科学研究費助成事業 基盤研究(C), 基盤研究(C), 日本女子大学, 2007年 - 2009年『ザ・タイムズ』における「試験」言説の比較歴史社会学本研究は、「歴史」をふまえた「比較」の方法に関する、新聞を資料とした一連の実験的考察の一部である。そこでは、(1)1980年前後に、日本の受験生の態度が「受験に対する否定」から「中立」に変化すること、(2)試験成績の公開に関してイングランドとウェールズで90年代以降違いが生じたこと、(3)この90年ほどの間に試験制度の変化が量的な観点を強化されていくこと、(4)この変化は、イギリスの場合には試験の教育制度への統合過程、日本では逆にその分離過程と関連していることが明らかとなった。こうした研究を通して、このタイプの研究には、「言説」よりも「記事」という視点が適切であるとした。また、具体的な方法論として「逆欠如視点」「社会文化的ネットワーク分析」を提案した。
- 日本学術振興会, 科学研究費助成事業 基盤研究(B), 基盤研究(B), 神戸大学, 2005年 - 2008年パーソンズ理論を、未公刊・新資料を活用する近年の水準において再構成し、その現代社会分析に対する実践的応用可能性をいくつかの領域において示すという課題を、一定程度達成した。医療・生命研究、グローバル化と宗教、知の生産様式と大学、社会学的公共性論の構築という夫々の課題領域において一定の成果を得、とくにそれら全体の統一的基礎理論をなす、規範生成論において前進した。競争的資金
- 日本学術振興会, 科学研究費助成事業 基盤研究(C), 基盤研究(C), 神戸大学, 2005年 - 2007年, 研究代表者本研究では、歴史的な展開を踏まえつつ、高等教育に関するフランス、日本およびアメリカの今日的な観点における比較研究を行なうことを目指し、総合的な分析を深めていった。研究を進めていくために必要な現地調査も国内、国外において実施することができた。近年の高等教育ならびに研究体制は、各国ともに大衆化(学生数の増大と学生層の拡大)と卓越化(国際的に優れた研究機関として研究成果をあげること)という、相反し得る方向性のそれぞれに対応することが求められている。フランスにおいても日本においても、大学の組織運営の中で学長を中心とする集権的な制度による対応の方向や、大学の外部の者による大学運営への参加、また評価の重要度の増大といった共通した方向性を見出すことができる。そうした国際的な流れは確認した上で、しかし高等教育や研究の本来的な意味を考察することもまた必要なこととなろう。高等教育や研究体制をめぐる近年の動向を明らかにするとともに、それらの本来あるべき姿を求めていく観点の重要性を、本研究を通じてあらためてとらえることができた。当該研究期間の間に論文、学会発表、図書等によって研究成果を発表したが、とりわけ『「知識人」の誕生1880-1900』(クリストフ・シャルル著、白鳥義彦訳、藤原書店、2006年)や、研究代表者の白鳥が編集の担当にあたり、フランス、イギリス、日本等を中心とする高等教育および研究体制に関する国際的な比較を通じて「高等教育改革の諸問題」を特集した『社会学雑誌』第25号の刊行(2008年)などは、特に重要な成果として挙げることができる。競争的資金
- 日本学術振興会, 科学研究費助成事業 基盤研究(A), 基盤研究(A), 神戸大学, 2003年 - 2006年1,調査研究の概要 本研究は、アジアの2つの地域を中心に、移動・移住とエスニシティの交錯、地域社会が再構築されていくダイナミズムを実証的に研究した・調査は、(1)中国・朝鮮半島を中心とした東アジア地域、(2)タイと周辺近隣地域、(3)フランスとカナダにおけるアジア系移民を対象とした。 2,研究から得られた知見の鞭 (1)東アジアの各国は、外国人労働者の導入が事後承認的に拡大している。外国人労働者が雇用される条件は、社会的な制度や構造の面で制限が大きく、また入国に際してもブローカーの手配に頼らざるを得ない場合が多い。このような労働環境が移住労働者の生活を過酷にする悪条件を生んでいる。 (2)外国人労働者はネットワークを移動先の社会に広げているのみではなく、故郷との緊密な関係を維持し続けている。中国・青島に移住した韓国人のエスニックビジネスが表すように、本国の文化へのアクセスが文化資本に転じる場合、「ホンモノ」の文化を移住先で演出することもある。 (3)移動者たちは、移住先の地域社会から隔離されたコミュニティを構成することが多い。彼らが劣悪な生活と労働の環境におかれるならば、周縁的な位置に閉じ込められている構造を他者との差異化によって地位を反転させたいという願望が強くなる。韓国における中国朝鮮族が「中国」の「朝鮮族」として韓国社会から一線を引こうとするエスニックな感情は、その典型的な姿を表現している. (4)タイに移住したミャンマー人モーン族が定住志向を高め、またタイ東北部のベトナム移住者が集団としてのアイデンティティを希薄化させている事例も本研究は明らかにした。タイに移動した人々が過酷な条件の下にあっても必ずしも不幸の中に押しつぶされていないことも明らかにされた事実である。移動性を高めた都市は、異種混交性、雑居性、脱中心(権威)的な構造を都市の性格として内在化させおり・移動者が新しい生活チャンスを獲得する空間を出現させている事実も存在している。競争的資金
- 日本学術振興会, 科学研究費助成事業 基盤研究(B), 基盤研究(B), 京都大学, 2003年 - 2004年1960年代の研究-生活文化と意識における変容の国際比較本研究では、主に人びとの生活そのものにおける1960年代の特性にその焦点をあて、そこにおける生活・意識の変容が蒙ったであろう様々の影響を、一方では科学技術の発展などとのある種物質的な関係、他方では大衆社会化や消費社会化などによるより抽象的な作用のうちに探究した。これらの多彩な観点からなされた研究は、本研究の分担者すべてに対して、そこで実際に同時代を経験しながら、この時代の息吹を伝える証言として、60年代にさまざまの学問領域を背景にしながら行われた数々の分析の重要性を知らしめることとなった。これは本研究の問題意識の中核に、ふたつの主題を形成するところとなった。すなわち、何よりもまず人びとの生活そのものを知ろうとすることと、そして同時にこの生活とそこで発展しつつあった諸科学-人文・社会諸科学を含む-との深部での相関関係を明らかにすることである。 上記の問題意識を持ちながら、研究代表者および分担者は各自の研究主題に基づき報告論文を作成した。以下にその表題を報告する。「《マクルーハン》とはなんであったか」(富永)、「『"ふたり"の60年代』に向けて」(斎藤)、「60年代と身体の未来」(田中)、「分裂病の60年代」(北垣)、「『沈黙の春』とサイボーグの60年代」(遠藤)、「牛乳神話の形成」(藤原)、「教育と人間の60年代」(前川)、「1960年代の『大学闘争』のもたらしたもの」(白鳥)、「《言葉と物》の60年代」(葛山)、「1960年代の日米繊維摩擦の歴史的意義」(籠谷)、「三島由紀夫自決・再考」(大澤)、「60年代日本精神誌」(山室)。
- 日本学術振興会, 科学研究費助成事業 基盤研究(C), 基盤研究(C), 神戸大学, 2002年 - 2002年国境を超える移住・エスニシティ・地域社会の再構築に関する社会学的研究本研究の目的は、国境を越える移住・移動を経験する人たちのエスニシティの再構成に関する研究と、移動する多様な人々が共住する地域社会の再構築に関する研究を、国際共同研究として発展させるための可能性を検討し、実現するための条件を整えるところにあった。定期的な研究会とシンポジウムを8回開催した。海外から、李路路教授(中国:中国人民大学)、マニーマイ・トンユウ教授(タイ:コーンケーン大学)、イヴ・デロア教授(フランス:ローベル・シューマン大学)が参加した。 李路路報告、マニマーイ報告、デロア報告がともに指摘した事実は、人々が就業のために国境を越えて移動する趨勢はもはや不可逆的ともいえるもので、特に、冷戦体制が崩壊した後は、一気に加速していることであった。人の移動が生み出している新たな格差や差別の問題、異質な人々が共に住む社会空間として再構築していく課題、あるいはリージョンという概念の必要性が具体的な事実から明らかにされた。また、現地調査を実施するために、調査地域を選定し研究テーマを絞り込むという本研究目的も検討することができた。 以上の研究成果をふまえて、アジアにおける対照的な2つの地域の移動・移住とエスニシティの交錯、相互認知と対抗、トランスナショナルな移動が創り出す「リージョン」に関する実証的な研究を計画している。第1の地域は、中国と朝鮮半島とが接触する中国吉林省、青島、および韓国ソウルである。第2の地域は、タイと近隣諸国の国境地域(バンコクと周辺地区、ビエンチャン・ノンカイ地区)である。当地域は、地域社会が再構築されていくダイナミックな構造をみることができるフィールドでもある。移動・移住の具体的な事例をとおして、社会変動のダイナミックな構造をも考察する。
- 日本学術振興会, 科学研究費助成事業 基盤研究(B), 基盤研究(B), 大学評価・学位授与機構, 2000年 - 2002年大学外高等教育の展開状況と大学との関係に関する日米欧の比較研究大学外(非大学)高等教育機関は,伝統的大学よりも短い修業年限で高度な実用的教育を提供するという特徴をもち,幅広い層の多様な高等教育需要に応える役割を果たしている。21世紀の高度学習社会においては,生涯をつうじて必要な時に大学や大学外の高等教育機関で学習し,履修成果を積み重ねる形の学習需要が拡大していくと予想される。大学外の高等教育機関で学んだ学生が大学等でさらに学習を続け,学士の学位を取得する学修形態はアメリカの例がよく知られるが,今後,流動化が進むにつれて日本,ヨーロッパにおいてもそうした学習需要が高まると考えられる。 こうした趨勢のなかで重要さを増しているのが,高等教育機関で提供される教育課程の単位化とモジュール化,学修の体系性と質・水準を保証する方法,そして国内のみならず国を超えて単位互換と学位・資格の相互認証を可能にする制度・手続きである。本研究ではこのような問題関心から,大学外高等教育機関と大学を対象に,学生の移動と学修の体系性,授与される学位・資格の国内および国家間での承認に関して比較研究を進めてきた。 欧米先進国については,アメリカではコミュニティー・カレッジから大学への移動が主流を占めるものの,上位の学位・資格を目指す上方移動ばかりでなく下方移動(reverse transfer)も少なくない。また,一定の短期間の学修に対して,履修証明書(Certificate)を与える学修形態も増えている。他方,ヨーロッパでは1999年の教育担当大臣会議における「ボローニャ宣言」採択後,EU域内の学生移動を推進するべく各国で改革が進められている。その一つがECTS(European Credit Transfer System)に準じた単位制度の導入,大学の教育課程を学部と大学院とに区分する2段階制の採用,ならびに高い国際的通用性が期待される学位Bachelor, Masterの導入である。 日本については,4年制国公私立大学の全学部を対象に全国アンケート調査を実施した。その結果から,(1)学生の移動(編入学)は短期高等教育機関から大学への上方移動が主流であるものの,短期大学から系列4年制大学への編入,高等専門学校から国立工学系学部への編入,4年制大学から自大学・他大学への学士編入など,編入学のあり方に一定のパターンが存在すること,(2)編入学者の受け入れにあたっては,編入学前に短大・高専等で行なった学修の内容を問わずに単位認定が行なわれるケース(包括認定)が3割にのぼることなどが明らかになった。 システム内およびシステム間での流動化の要求が高まるにつれて,単位・モジュールの標準化,履修単位の互換,学位の相互認証,そしてこれらの前提として高等教育の品質保証メカニズムが必要となっていることは各国共通の課題である。