動脈硬化性疾患シングルセルアトラスの作成とゲノム統合解析による発症メカニズム解明
平田 健一, 井上 大志, 大竹 寛雅, 山中 勝弘, 江本 拓央, 岡田 健次, 山下 智也
日本学術振興会, 科学研究費助成事業, 基盤研究(B), 神戸大学, 2023年04月01日 - 2026年03月31日
本研究の目的は、動脈硬化性疾患(冠動脈疾患CAD、大動脈瘤AA、大動脈弁狭窄症AS)のシングルセルアトラスの作成と全ゲノム解析を行い、トランスオミックス統合解析を行うことで、それぞれの疾患の相違点を炙り出し、疾患のリスク層別化を行い、発症メカニズムを解明することである。本研究では、これら3疾患について、1)病変部のシングルセル+核RNAシークエンス(scRNAseq+snRNAseq)からシングルセルアトラスを作成、各々の疾患特異的マクロファージの同定を行うと同時に、2)T細胞レパトア解析から各々の疾患において、特徴的な抗原が存在するのかを明らかにする。さらには、3)Genotyping of Transcriptomes (GoT)による シングルセルレベルで骨髄のクローン性造血の関与を調べる解析と4)全ゲノム解析による遺伝素因とトランスクリプトームの関連を解析する、expression quantitative locus (eQTL)解析を行う。3)と4)の実施にて、ゲノム・トランスクリプトーム統合解析が達成できる。すでに、3疾患の少数サンプルでのシングルセルトランスクリプトーム解析は終了し、シングルセルアトラスの概要は見えてきている。CADでT細胞受容体レパトア解析が終了し論文報告を行った。AAでは、結果を受けマウスでの実験も同時実施しており、マクロファージやB細胞での疾患特異的な特徴のデータを得ている。ASでのクローン性造血(CH)の原因となる体細胞遺伝子変異の解析数を増加させており、少数患者でのGoT解析を進めている。まずは3)GoTの統合解析手法の確立を目指す。全ゲノム解析は実施できておらず、4)eQTLの実施までには、さらに時間が必要と考えられる。